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「農家とともに」プロジェクトvol.5。今回は、静岡県袋井市にある農業生産法人有限会社グローの石原さんにお話をお伺いしました!

いきなりですが、みなさんは「流行」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?
ファッションやグッズ・家電などのプロダクトや、お料理・スイーツなどの食べ物、さまざまなものに「流行」があり、メディアの特集やクチコミ、SNSなどでしばしば注目を集めます。

では野菜にとっての流行とはなんなのでしょうか?

水で育てた野菜

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今回お邪魔した石原さんの畑では、ビニールハウスを使用して水菜・赤水菜・小松菜・ベビーリーフ・ほうれんそう・ラディッシュ・クレソンなどを一年中栽培しているそうです。
早速ビニールハウスの中を見せて頂くと、芽が出たばかりのものから、収穫間近のものまで、赤い水菜が一面に広がっていました。この赤い水菜についてお聞きしました!

「これは赤水菜という茎の色が紫色をした水菜ですね。
アントシアニンという、目にいいと言われている成分が多く含まれています。最近よく、”機能性野菜”ってよく話題になってますが、その1つですね。」

最近流行の”機能性野菜”とは、本来の栄養素の含有量を増やしたり、本来なかった栄養素を加えた野菜のことです。本来の野菜では得ることが出来なかった栄養を効率よく接種出来るということで、健康志向の高い方などの注目を集めているようです。

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この赤水菜、土ではなく、発泡スチロールから生えているように見えます。どうなっているのでしょうか?気になったので聞いてみました!

ーーーーーー発泡スチロールの板の上に蒔いて育てているのですか?
「種を蒔くのはスポンジの上ですね。そっから芽が出るんですけど、芽が出て少し大きくなるまで置いといて、今度は発泡スチロールの穴の中にこの芽が出たスポンジを植えて行くんですよ。この下には水が張ってあります。「水耕栽培」といって、水で育ってる栽培方法なんですね。この水には肥料と酸素が放り込んであってそれで育つんです。土で作っていくのと比べるとちょっとセレブですね、飲みたい時に水が飲み放題で育ってるわけですから(笑)。
水は流しっぱなしで、何時間かおきにこのケースをぐるっと回るんですね。その時に必要な養分や水を足して行くので栄養や水がなくなることはないです。」

この発泡スチロール、水に浮いていたんですね。
石原さんの話では、この水耕栽培で育てている水菜は夏で30日、冬で60日ぐらいで収穫なんだそうです。

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土を使わずに育てる「水耕栽培」を取り入れている石原さん。
土を使わないことで、成長スピードや管理方法、野菜の味などに違いはでるのしょうか?

ーーーーーー土に植え付けない方が管理がしやすかったり利点があるんですか?
「やっぱり、土の中にいろいろ悪さをするものがあったり、同じ場所で何回も繰り返し野菜を作ると、土が弱くなっちゃうことがあるけど、水の場合はそれがないですね。もし弱ってしまったら水をすべて入れ換えれば、またゼロかイチに戻るので。
もうひとつ大きなポイントは、芽が出てから植えるまでの期間が短いことですね。普通、種を植えてから芽が出るまで、大体3〜4日かかって、そこから大きくするのに、また、3〜4日かかって、大体一週間くらいかかるんです。土で作る時は種まきから取りかかるから芽が育つまで一週間かかるけど、水耕栽培はその一週間分ここはなくすことが出来るんですね。芽が出て大きくなってからのものを植えるので、普通は60日かかるところが1週間分短く出来るんです。
そして最後は『食味』の違いですね。土と水だと全然違って、硬さだったり、えぐみであったり、野菜の苦みであったり、違いがでますね。」

水耕栽培は、野菜の成長を邪魔する雑草や、害虫・病気が発生しづらいようです。
また、野菜が根を張り、栄養や水を吸収する際に、障害となる物が少ないので、土耕栽培よりもはやく成長します。

育つ時期と、食べる時期と

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水耕栽培は室内で行うことが多く、風雨や台風などの天候に大きく左右されない、という利点もあり、石原さんの畑でもビニールハウスを使用して水耕栽培を行っており、安定して野菜を栽培出来るそうです。
1年を通して野菜を出荷し続けている石原さんですが、野菜を育てる上で苦労していることは何なのでしょうか?

ーーーーーー野菜を育てる際に苦労することって何ですか?
「僕のとこの野菜ってだいたい冬の野菜なんですよ。でも夏に葉物をサラダとかで食べたいっていうニーズがある。だから夏に冬野菜を作るって言うのがすごく難しいんです。」
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ーーーーーーその場合温室を冷やすんですか?クーラとかですか?
「そうです、温室を冷やします。でもクーラとかは使うと採算が取れなくなってしまうので、扇風機で風を起こしたり、換気扇などで暑い空気を逃がしたりして、温室を冷やします。」

水菜や小松菜といった野菜の旬は冬です。夏と冬では当然、気温や湿度、日照時間など野菜を育てる環境が違います。夏に育つ環境を整える、という点で、苦労したという石原さん。そうした苦労や様々な工夫をした農家さんたちのおかげで、私たちは夏にも冬の美味しい野菜を食べることが出来ているのですね。

ーーーーーーちなみに暑いとどうなっちゃうんですか?
「育たないです。大体このくらい(10cmくらい)でとまっちゃいますね。人間と一緒ですね、暑いと何もしたくなくなる(笑)。」

確かに人間も暑いとやる気も動く気もなくなりますから、冬野菜もきっと同じ気持ちなんでしょうね!

こだわり

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野菜に対するこだわり、について話していただきました。
「一番こだわっていることですが、植物って一番栄養がある時って、種の時なんですよ。
よく皆さん買い物行かれて、大きいものを選んだりするんですよね。得したなーと思ったりすると思うんですが、大きくなればなるほど、栄養が減ります。実際は種を食べた方が一番栄養があるんですけど、栄養がありすぎてお腹壊したりとか、種がなくなってしまったりするので、種を食べるのはしないでください。だから、僕らはできるだけ小さめで収穫します。
大きくして、重量を重くすれば、僕らも当然……ね。でも、それより食べてもらう人のことを考えてね。」

自分たちの利益ではなく、食べる人のことを考えて収穫を早めているという石原さん。
大きい方に目が行きがちですが、小さい方は小さいなりに意味があるということですね。
量が欲しいとき、栄養が欲しい時と、必要に応じて野菜を選ぶことが大切なのでしょうね!

クレソンや小松菜、ケール、ペビーケールなどの畑も見せて頂きました。
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どれも立派で、試食もさせて頂きました!
クレソンはほんのり辛みと香りが口の中に広がり、さっぱりとした後味でした!
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小松菜は葉と茎がしっかりしていて、その立派さに驚きました!
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ケールとベビーケールも頂きました!ケールは葉に厚みがあり、しっかりとした触感でしたが、食べた食感は柔らかく、野菜の程よい苦みがありました。ベビーケールはざらっとしてそうな見た目とは裏腹に薄く柔らかい質感と、ケールよりもあっさりとした味わいで、どちらもおいしかったです!

vol.6につづく!